紫波郡紫波町土館
そしたけゃあ、ばさまあ、瓜が流れて来たずおん、川がら。んで、「あゃ、これゃ旨(め)そだ瓜だごと」と思って拾って食ったど。旨(うめ)がったずおん、とっても。まだいだっけゃ、まだ一つ流れで来たったずおん。「ああ、先たの旨(んめ)がった。まだ食うべがな」と思ったずども、「いやや、これゃ、じさまさ持ってって一緒に食うべ」ど思って家(え)さ拾ってったずおん。して、戸棚こさ入(へ)れでしまってらったど。じさま帰って来たがら、「じさま、じさま。おれゃあ、今日瓜こ拾って、とっても旨がったよ。お前(め)もいっしょに上っでごじゃい(めしあがってください)。戸棚こさ入(へ)れでるはんで」って言(へ)ったずおん。「んでゃ、おれも食うべがな」って、戸棚こ開げでみたずおん。「何したすがな、ばさま、瓜こでなゃあよ、こりゃわらしこ居だ」って言ったずもの。「女子わらしこ入ってらぁよ」と言ったずもの。「そんたらごとなゃ(そんなことはない)。おれゃあ瓜こしまってらったよ」って言ったずおん。なんと、瓜の中から、わらしこあ、生まれでらったずおん、女子わらしこあ。「めげけ(かわいい)わらしこだなあ。これゃ、瓜の中がら生まれだから、瓜こ姫こど名前つけべや」と言うごとになって、瓜こ姫こど名前つけだど。そしていっしょけん命めごがって育てだずおす。
岩手郡雫石町黒沢
婆が川へ水汲みにいくと、瓜が流れてきたので拾い戸棚に入れておく。爺が山から帰ったので、瓜をたべさせようと出すと、売りが割れ女の子が出てくる。瓜子姫子と名づけて育て、年頃になったので、嫁にやろうと、着物を買いに爺婆が町に出かける。
遠野市新殻町
婆が川で瓜を拾い、割ってみると仲から女の子がでてきたので、瓜こ姫こと名づける。
気仙沼郡住田町世田米
爺が山へ柴刈りにいき、婆が川へ洗濯にいくと、瓜が流れてくる。拾って帰り、切って食べようとすると女の子が生まれる。瓜子姫と名を付けて育てると美しい娘になり、毎日機を織って暮らす。
島根
なに昔があったげない。昔あるところにのう、じいさんとばあさんとあったげない。ある日まこと、じいさんは木こりいったげない。ばあさんは川へ洗濯にいったげない。ばあさんが川で着物をすすいどるとのう、上の方から、つんぶりこんぶり瓜が流れて来たげない。ばあさんがそれを拾うて食うたらのう、よほどうまかったいのう。「もう一つ流れてこい、じいさんに持っていんでやろうぞ」といったら、また、つんぶりこんぶり、今だあ大けなのが流れてきたげなてやのう。ばあさんが持って戻るのが、しわいような大けな瓜だったげない。その瓜の、ばあさんはひつの中へ入れて、じいさんの戻んなるのを待っちょったげない。ところが、じいさんがなかなか戻ってこんのんだけえ。かどへ出たり入ったりして待ちょったげない。そのうちに、じいさんが戻ってきたので、「じいさん、遅かったのう。はあ戻んなるか、はあ戻んなるか思うて、待ちょった。待ちょった。じいさん、今日はのう、川で瓜流れてきたで、食うたらあんまりうまかったのでのう、『もう一つ流れえ、じいさんに持っていんでやろうぞ』というたら、こがに大きな瓜が流れてきてのう。戻るがしわあようなったやや。それをおまえと連うて食おう思って待ちょった。待ちょった。割って食おうや」と、いうて包丁で割ろうとしたらのう、瓜がひとりでぽっかり割れてのう、中からかわいげな、かわいげなお姫さんがでてきたげない。じいさんもばあさんも、とても喜んで瓜から生まれた人だげえいうて、瓜姫と名をつけたげない。
とんとん昔があったげな。いい爺さんと婆さんとがあったげなあだもん、子供がなあて困っておったげな。爺さん山へ木樵りに行ったげな。婆さん川へ洗濯に行ったら、川からドンブラコンブラ、ドンブラコンブラ、大きな瓜が流れて来たげな。お婆さんは喜んで抱えて帰って、大切に米櫃の中に入れてしまっておいた。そうしたら、爺さんが山から戻ってきたけん、「爺さん爺さん、まあ今日はいいことがあった。大きな大きな、ほんに見たこともないやな大きな瓜が流れてきて、米櫃に大切にしまってああけん」いって言ったら、「やあ、そげな瓜なら、ほんなら早く切って食おうじゃないか」いって、爺さんが言って、爺さんと米櫃覗いたら、中になんやら、「爺さんさいがない」なんだか、「爺さん管がない」なんていやな声が聞こえるので、なんかともって、そろーとふた開けてみたら、瓜がちゃんと二つに割れて、中からかわいげなお姫さんがおおなって、そおからはたを織っちょったって。「ああ、これはまあ、ほんに神さんが、子供がないいって拝んじょったけん、授けてごしなったげな。こりゃ瓜姫て名前を付けえがええ」。
長崎
昔、おじいさんとおばあさんがおらったげな。おじいさんな、山へ木切りにいて、おばあさんな川へ洗濯へいったげな。そうしたら、川上から、瓜が、どんぶりこっこ、すっこっこ、ち、流れてきたち。そうしたら、ばあさんな、それを拾うて、じいさんに食ましょうしてうちに帰って、桶ん中に入れて蓋をしとらったげな。そうしたげなら、じいさんな、山から戻ってきて、「ばばよ、ばばよ、いま、戻ったばい」ちゅうて、「おじいさんな、えらかったろうな」ちゅうて、ばあさんが言うて、「俺あ、今日は、瓜を拾ったげ、お前、かましょうばいな」ちゅうて、そうして、蓋を開けても、蓋が開かんげなね。開かんもんじゃけ、隣から、よきょう借ってきて、横から、ぶっちゃぶったげな。そうしたげなその瓜が二つに割れて、立派な女子ん子が、でけたげなちゅうて。「ああ、こりゃあ、立派な子じゃ何て名を付けよう。これは瓜から生まれたけ、瓜姫と付けよう」ち。
むかしむかし、お爺ちゃんとお婆ちゃんがあって、お爺ちゃんは山へ柴刈りに行く。お婆ちゃんは川へ洗濯に行く。と、川上から、洗濯していると瓜が流れてきたと。で、お婆ちゃんがこれを喜んで拾って、持って帰って、そいで桶の中にしておいた。それから、お爺ちゃんが帰ってきて、「おーい婆よ婆よ、帰って来たが。もう腹がペコペコや。なんにもないか」と言うて。すると「ああ、もうなんにもないが。そこにきょう瓜が流れてきたから、売りを拾って桶の中に入れておるから、あれでも割って食べなさい」と、こう言うた。それでお爺ちゃんが行って、蓋をあけて見るというと、瓜じゃなくてきれいなお姫様がおった。それから、その、おじいちゃんはかわいがってきれいにお姫様に育てた、と。